住宅事情

イギリスの家、というと、ロンドンにあるような立派な建物や、あるいは大きな庭に、おとぎ話に出てくるような可愛らしい家を想像する方が多いかもしれませんが、実際に、イギリスでは皆そんな家に住んでいるのでしょうか。 また、不動産の価格は?

 日本とイギリスの住宅事情の違いを挙げると、とてもここには書ききれないほどで、共通点の方が少ないのでは?と思わざるを得ません。

家の価値

 まず、約25年で家の価値がゼロになり、「建物の老朽化」のため、建て直しを余儀なくされる日本と違い、イギリスでは、「家は、何十年も、何百年もそこにあるもの」と思われていて、その価値も、上がることさえあれ、滅多に下がることはないのです。 

 よほど状態が悪かったり、内装が極端に時代遅れになったりした建物はさすがに値が下がりますが、そういった物件でも、上手に内装や庭などの手入れをすれば、また価値を大幅に上げることも可能なので、ある意味家は消耗品と考えなければならない日本人には羨ましい話です。

イギリスの不動産価格

 しかしその裏で、イギリスの不動産価格は驚くほど高く、ロンドンの高級住宅地のみならず田舎の一軒家をとっても、一億や二億する物件がゴロゴロしているくらいなのです。 

 特に2000年からは不動産価格の高騰が続いていて、普通に働いている若者が結婚し、いざ持ち家を購入しようと思っても、手が出せないというのが現状です。

 この主な原因には、経済成長や、新築住宅の供給の制限、あるいは持ち家率の増加などがあるようですが、例えば私の住む地域(ロンドン通勤圏ですが、カントリーサイド)の不動産情報誌を見てみると、今週一番安いであろう物件は寝室一つと居間・台所の古びたアパートで、2千700万円ほどの価格がつけられています。 

 日本の地方都市であればそこそこの大きさの中古一軒家が買える値段のついたこのアパートは、写真の雰囲気から察してあまり治安の良い地域に位置しておらず、また、建物自体の質も随分低いもののように見受けられます。  

 参考サイトとして日本の不動産資格の登竜門である宅建の情報サイトがあります。

イギリスで家の価値の決め方

 イギリスで家の価値を決めるのは、主に寝室の数、庭の広さ、建物の状態や年代などであり、また、環境(治安)が良いこと、良い学校が近くにあることも、価格を左右する重要な要素です。 ただ、庭の広さの表示に関してはこちらはかなりどんぶり勘定で、物件の広告にも、「半エーカー位」とか、「手ごろなサイズの庭」といった形で載せられています。 

 その代わり、「台所のオーブンは、AGA(=暖房機を兼ねた、常時火が入っている可愛らしいオーブン。カントリーハウスにあるのが理想的)」とか、「暖炉はInglenook(=火の周りに座るスペースがある大きな暖炉)」といった、どちらかというと美的な部分が強調されているのは、興味深いところです。

 また、築数百年の、昔話から抜け出してきたようなお家でも一般の住宅と同じように売り買いされますが、その建物が歴史的、文化的に価値があると見なされた場合、「listed building(=保護物件)」となるため、その地域の管轄の許可を得ないと、簡単に壊したり、外観を変えたりしてはいけないことになります。 

 こういった家を買う人の中にも、「自分の家は高い塀に囲まれているから、見つからないだろう」と考えて、ペンキの塗り替えや腐食の修理が定期的に必要な窓の木枠を、手入れの楽な塩化ビニル製のものに変えてしまうような不届きものがいるようですが、このような不正が見つかると、「すぐ元に戻して」という命令が下されます。 こういった規則があるお陰で、イギリスでは、貴重な建物が次の世代に大切に受け継いで行かれるのです。

戸建の家が全体の20%しかないイギリスの実情

 とはいえ、戸建の家が全体の20%しかないイギリスでは、多くの人が「セミ・デタッチ(=一件の家が二つに区切られている)」や、「テラス・ハウス(=三戸以上が繋がった連続住宅)に住んでいることになります。 それでも、皆がまめに庭の手入れをし、内装のコーディネートにも気を配り、それぞれの個性溢れる家にして楽しんでいるようです。 賃貸の家賃は、「dead money(=捨て金)」と考えるイギリス人、小さくとも自分の持ち家があるというだけで、充分気持ちが満たされるのかもしれません。

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