喫茶店に見る、日英の違い

イギリスの喫茶店と、日本の喫茶店、出される飲み物や食べ物が違う以外には、一体どのような違いがあるのでしょうか。

 日本とイギリスは同じ島国で、国民の気質は恥ずかしがりや、いずれの国にも皇室が存在するなど、共通点が多くあるようですが、やはりそれぞれの国民性には大きな違いがあります。 そして、そのことを肌で直接感じられる場所の一つが、喫茶店のように思うのです。

 まず、イギリスで喫茶店に入って席に着き、注文を取ってもらおうというときに、声を上げてウェイターやウェイトレス(以下ウェイトレス)を呼んではいけません。 ガツガツとしたせっかちな行動と見なされるせいのようですが、ともかく彼らがこちらを向いてくれるまでは、大人しく待っていなければならないのです。 

 そして、ウェイトレスがこちら側を向いたかな、という瞬間を狙い、手を挙げて笑顔を見せて、彼らの注意を引き付けることでようやく注文、という流れが出来上がるのです。それではウェイトレスがいつもお客さんの様子に気を配ってくれているかというと全くそうではなく、それぞれが自分の喋っている相手、運んでいるお茶やケーキ、あるいは片付けているテーブルなどに集中しているので、こちらに気付いてもらうのは至難の業なのです。 

 と、こう書くと、それは彼らが真剣にそれぞれの仕事をこなしているから、という風にも解釈できるかもしれませんが、実際彼らが集中している「お喋りの相手」はウェイトレス仲間であり、話の内容は仕事のことでもなく、運んでくるお茶は受け皿にこぼれていて、テーブルの片付けもいたって雑、といった調子です。

 つまり、一度に一つのことしか出来ないということなのでしょうか、数分前に入店したお客がそろそろ注文する頃、ということは彼らも承知しているはずですが、自分たちのお喋りがひと段落するまで、あるいはそのときこなしている仕事が済むまでは、お客のことは待たせておけばいい、という姿勢の人が非常に多いのです。 

 私の知り合いには、比較的店内が空いているにもかかわらず延々待たされてイライラし、つい手を挙げてお喋り中のウェイトレスを呼ぼうとしたら、その子に手を振り返されてあきれてしまった、という人もいるのですが、要は、イギリスの喫茶店でスムーズに注文から支払いまでができるかは、ほとんどウェイトレスのペース次第、気分次第で、これには日本人のみならず、イギリス人たちでさえも嫌気がさしているようです。

 それに比べて日本のウェイトレスは、お水とおしぼり、メニューを持ってくるタイミングや、注文を取りに来るタイミングもテンポがよく、たまに話をしている人たちがいても、それは大抵仕事内容に関する連絡や報告で、一つの作業をしながらも、店内のお客さんの様子にもちゃんと目を配っている様子が見られて、本当に有能だな、と感心させられることしきりです。 私は日本の喫茶店に入るたび、「イギリスの喫茶店が、みんなこうだったらいいのに」とずっと思っていたのです。

 しかし、残念ながらそんな素晴らしい日本の喫茶店にも大きな欠点があります。 それは、飲食が終わってもダラダラと居座る客への扱いです。 確かに、店内が混んでいて、待っている人がいるようなときにもお茶一杯で長居をするのはお店にとって迷惑なことでしょうが、かなり空いているときにでもジワジワと追い出しをかけてくるのには閉口します。

 お買い物で疲れた脚をゆっくり休めたい、といった気持ちで喫茶店に入るのに、暫くすると「そろそろまた何か頼まなくちゃ悪いかしら」などと考えたりして、落ち着くこともできません。

( 参考ページ : ウェイター ウェイトレスの体験記
( 参考サイト : アルバイト&短期バイト辞典 - 仕事解説と体験談

日本のようにお客を急かすことはない

 これに対して、一見サービスの悪いイギリスの喫茶店では、日本のようにお客を急かすことはありません。 給仕する側はマイペースでやることを主張しますから、お客さんもそれぞれのペースでどうぞ、ということなのでしょうか、とにかく空のカップもそのままに、放っておいてくれるのです。

 お陰でイギリスの喫茶店では、自分の注文が来るだけ来たら、かなり落ち着いてお喋りをしたり、時間をかけてお茶を飲んだりすることができるのです。 そもそも「お店の回転率」を気にするというのは商売上手なアジア的発想なのでしょうか、とにかくヨーロッパでは滅多に感じることのないプレッシャーではあります。 

 このように、ウェイトレスが有能な代わりに、客にもある意味有能さを求める日本の喫茶店と、サービスはグダグダでも、お客がゆっくりと歓談を楽しめるイギリスの喫茶店、どちらが良いかは好みによるでしょうが、それぞれの国の仕事に対する姿勢の違いが浮き彫りになっていることは確かでしょう。

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