なぜ?「もう日本に帰りたくない」在英日本女性

 一度イギリスに住むと、その居心地のよさに日本に帰りたくなくなるという女性が沢山います。 イギリスは、本当にそれほど良い所なのでしょうか。 一体、どんなところが日本と違うのでしょうか?

 国際結婚をして、数年間イギリスに住んでいる日本人女性の中には、今万一ご主人に何かあっても、日本には戻らず、イギリスに住み続けるだろう、という人が多いのに驚きます。

 私自身は、年に何度か里帰りしていることもあってか、今すぐにでも日本で暮らしたいという気持ちがあるので、彼女らがどうして生まれ育った国をほんの数年で忘れられるのかしら、と最初は大変不思議に思いました。 それでも、じっくり考えてみると何となく、彼女たちの言わんとすることがわからなくもないのです。

 イギリスという国は、曇りや雨の日が多くて、その陰鬱さにはイギリス人でも嫌気が指すほどですし、生活する上で不便なことも多く、そういった面では決して住みやすい国だとは思えません。しかし、それでは良い面は何かとなると、イギリスの住みやすさの最大の理由は、日本の社会にある「閉塞感」がない、というところに行き着くのです。 

 よく言われるように、イギリスは個人主義の国ですから、それぞれが人の目を気にせず、また人の生活にも干渉せず暮らしているところがあります。

 日本では、未婚の女性には「ご結婚は?」、結婚した女性には「赤ちゃんはまだ?」、子供が一人生まれれば「一人っ子じゃ可哀想よ」、などいったことを初対面でも挨拶代わりに言うようなところがありますが、イギリスにいると、こういった質問は滅多にされません。 もし、稀に言ってくる人がいても、大抵の場合、こちらが冗談などではぐらかそうとすれば、空気を察してそれ以上踏み込んでくることはないのです。 

 ところが、どうやら日本では、「家族四人、子供は男の子と女の子一人ずつ、お父さんは有名企業に勤務、美人のお母さんは専業主婦、家は持ち家で、車があって、、、」といった「理想の形」で固めたがる傾向があって、それに一つでも当てはまっていないと、好奇の的になってしまうように思います。

 実際には、そんな条件を全て満たしている家庭の方が少ないので、結果として常にお互いがお互いの生活を比べあい、干渉することになっているのではないでしょうか。

 私自身も、日本にいると、いつの間にかそんな風に人目を気にするようになっていって、自分で自分が嫌になることがあるのですが、 イギリスでは、日本では気になる「年齢」や「外見」、「学歴」や「規格外の結婚のスタイル」などが、ほとんど気にならなくなります。 

 お店屋さんでお金を出すのに手間取って、(早くしないと後ろの人に迷惑かけちゃう)と慌てる私にも、「落ち着いて、ゆっくりでいいのよ」と、お店の人も、後ろで待っている人も声をかけてくれます。

 やたらと体裁を気にするあまり、自分の気持ちを軽んじるクセがついていたことも、イギリスに来て初めて気づかされました。 たとえ「理想の形」にはまってはいなくても、自分が自分らしく生きることができる国の快適さに慣れてしまったために、在英の日本人女性たちは再び日本に帰って生活する自信を失くしてしまったのでしょう。 

 ただ、そんな彼女たちも、里帰りの際には何週間も前からウキウキするように、日本にはしっかり愛情が残っているのです。 私からみても、便利で、清潔で、安全で楽しいことに溢れている日本はまるで夢の国のようですが、結婚して、ある土地に居を構えてそこで暮らしていくと決めた以上、少しずつ故郷が遠く感じられるようになるのは、ごく自然だと思うのです。