結婚式は英国式?日本式?

最近日本で、「籍だけ入れる」結婚が多くなってきているように、イギリスでも、式は省いて事務手続きだけを済ませる結婚の形が広く受け入れられています。 それでもやはり、「一度は花嫁姿に」という場合、国際結婚の結婚式はどこでどう行うのが普通なのでしょうか?

 いざイギリス人と結婚、となったときに考えなければならないのが、結婚式の場所と様式です。 式は日本で挙げるのか、それともイギリスか、あるいは公平に両方で行うのか、また、衣装は和服にするか、洋装にするか、などを決めなければなりません。 

 国際結婚をした友人の話を聞くと、両国でそれぞれお式を挙げた、という方は少数派でした。 やはり、結婚式の準備はたった一度だけでも大変な時間と労力を要するものですし、なにより費用の問題もあるので、親御さんがどうしても、という場合や、双方のご友人がとても多い場合など以外は、主な式はイギリスで、日本では和服で写真だけ、という形を取る方が多いのも当然でしょう。

 一度、国際結婚をした友人達と食事会との名目で集まったとき、それぞれの結婚式の写真を持ってきて見せ合いしましょう、ということになりました。そのときは、めったに会う機会のない、それぞれの旦那さまのお顔拝見、というのが主な目的でしたが、その場にいた7人中6人までがウェディングドレスとタキシードという組み合わせで式を挙げていたことが分かり、とても興味深く思ったものです。

 かく言う私は、その中で唯一、イギリスで着物を着てお式を挙げた変わり組でした。 本当のところは、私も皆と同じ白いウェディングドレスに憧れていたのですが、夫に「自分はイギリス人だから、燕尾服を着るが、君は日本人なのだから、日本の正装で参列して欲しい!」と懇願され、渋々着物を着ることに同意する羽目になったのです。

 始めは、ロンドンにある貸衣装屋さんで振袖を借りればいいと思っていたのですが、「結婚式用の振袖は用意していない」ということで、慌てて日本で調達することになりました。 

 イギリスでも着られるよう、洗濯機で洗えて、なおかつ日本的で古典的な柄の振袖をどうにか見つけ、もう何十年も着付けなどしていない母と、着物の着付けの経験ゼロの私とで何度か練習し、髪を自分で結い、どうにかそれらしき形でお式に臨むことができました。 (参考サイト:アンティーク着物と浴衣を楽しむ:簡単リサイクルTOP3も

式当日

 式当日、私たちが会場に選んだカントリーサイドにあるマナーハウス(=元々貴族の邸宅だった歴史ある建物)の正面玄関には、イギリス国旗と日本の日の丸が並んで掲げられ、私はそれを見ただけで、なぜか胸が一杯になってしまいました。 

 また、直前まで着付けに四苦八苦していた付け焼刃の振袖新婦とは知らぬ夫の親族や友人たちも、私の着物姿をみてとても喜んで、こちらが恐縮するほど沢山写真を撮ってくれました。 

 私の夫はキリスト教の中でもプロテスタントの信者ということで、幸い仏教徒の私と結婚するのにも特に制約や問題は無く、式ではお琴の生演奏をBGMにしたり、神父さんを巻き込んで三々九度の真似事をしたりと、随分好き勝手させてもらいましたが、同じキリスト教徒でも、カトリック信者の方と異教徒が結婚する際には、結婚生活の心がけなどを学ぶため、教会の定める結婚講座に通わなければならない、などといった決まりがあるようです。

 さて、私の式の話しに戻しますが、神父さんの前で誓いを立て、結婚証明書に署名をする結婚式を終えたら、次はお庭で写真撮影、との運びだったのですが、5月のイギリスの寒さを想定していなかった私の母を始めとする日本組は、「寒い、寒い」と言って、隙を見ては室内に入りたがり、集合写真撮影は思いがけず手間取りました。 

披露宴を兼ねたお食事会

 そして、ようやく披露宴を兼ねたお食事会、となったときには、私は、英語がそれほど自由に使えるわけではない日本の親族が、イギリス人の方たちと同席しなければならないことを考えて、内心ハラハラしておりました。 

 しかし、私の心配をよそに、手先の器用なある従兄弟は色々な折鶴を折ってプレゼントし、周りのイギリス人を喜ばせ、別の従兄弟はバイオリンの演奏をして会場を沸かし、他の従兄弟は兄のギターに合わせて、「歌詞の内容は相応しくないから申し訳ないけれど」と断りを入れた上で、日本人もイギリス人も知っている「上を向いて歩こう」を合唱してくれたのです。 

 この曲が始まった瞬間、会場にいる皆の気持ちが魔法のように一つになるのが感じられて、私は日本の家族を心から誇らしく思いました。 和洋折衷の結婚式ということで、会場側からも、「どんな風になるか想像つかない」と言われていましたが、参列した方々から、「こんなに楽しい結婚式は初めてだった」と口々に言われたことを考えると、 これはこれで良かったのかな、と思えるようになりました。

 ただ、「イギリスでは、結婚式の費用は花嫁側が持つのが普通である」とか、ご祝儀の習慣はなく、新郎新婦はプレゼントを貰うのみで、合理的なカップルは前もって欲しいプレゼントのリストを配ったり、あるいは少々露骨に商品券をせがんだりする、とかといった現地の常識を私が知ったのは、式直前でした。

 また、式をイギリスで挙げるとなったら、日本から参列してくれる方々の交通費のせめて一部くらいは負担するつもりでいなければ、という心遣いも、実際そのお金を準備して、従兄弟たちに渡そうと試みていてくれた母から言われて気付いたことです。

 私の無知のために、結婚早々夫や母に迷惑をかけていたのかと思うと恥ずかしい限りですが、こういった常識を学ぶ場所が限られているというのも、国際結婚特有の問題なのかもしれません。

広告