日本式・英国式「優しさ」の違い

「好きな異性のタイプは?」と訊かれると、多くの女性が「優しい人」というのを条件に挙げることが多いと思います。 それでは、日本の女性が求める「優しさ」とは、どんなことを指すのでしょうか。また、日本とイギリスでは、「優しさ」に違いはあるのでしょうか。 ここではそのことについて考えてみたいと思います。

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 日本でイギリス人の夫の話をすると、「それじゃあ、旦那さんすごく優しいでしょう?」と言われることが多々あります。 確かに、レディーファーストの国の男性ですから、車のドアをサッと開けてくれるとか、靴が脱ぎ辛くてモタモタしていればひざまずいて手伝ってくれるとか、恥ずかしがり屋で人目を気にする日本の男性にはない、スマートな優しさを持っているとは思います。

 ただ、彼と付き合っていくうちに、イギリス人の思う「優しさ」と、日本人の考える「優しさ」には、はっきりとした質の違いがあるということに気付かされることになりました。 

 お互いにそれをはっきり認識することになったのは、彼と初めて旅行に行ったときに起こった出来事がきっかけでした。 初めて訪れた土地でウキウキしている私に、彼が突然、「さて、今日は、これから何をしたい?」「どこに行きたい?」「お昼は、何が食べたい?」「夕食は、どんなところで何を食べたい?」と、私を質問攻めにしてきたのです。

 それまで、彼のことを「優しくて、頼りがいがあって、大人だなぁ」と思っていた私にはこれが大変ショックで、(この人も、結局優柔不断な人だったのかしら、、、)とがっかりしたのですが、一応、ガイドブック片手に一日のスケジュールを組み、なんとかその日はそれをこなしたのです。

 ところが、やれやれ昨日は大変だった、と思っていた翌日の朝、食事の席でまた同じ「今日は何をしたい?」「どこに行きたい?」が始まったのです。 さすがに前日のように企画を任せられることにウンザリして、私はつい「貴方には、自分の意見ってものはないの?どうして何でも私にまかせっきりにするのよ!?」と声を荒立ててしまったのです。

 すると彼は、「君のしたいことを何でもさせて上げたいと思って訊いていただけで、怒らせるつもりなんてなかった。本当は、自分が全部決めた方が楽だけど、君の意見を尊重しようと思ってあえて我慢していた」と説明してくれたのです。

 考えてみれば、イギリスのホテルに泊まると、朝食では「コーヒー?紅茶?」から始まって、「ミルクの種類」「パンの種類」「ジャムの種類」「卵の焼き方」等々、それは多くの選択肢があるのです。 それに対して、日本の旅館では、とりあえず旅館側が見繕ったものが否応にも目の前に出されて、その中からそれぞれのお客が好きなものを選んで食べる、という形を取っています。 

 つまり、イギリスでは、相手のために選択肢をできるだけ多く与えるのが「おもてなしの心」であり、「優しさ」となるのですが、日本では、「いちいち面倒な注文などしなくても、目の前に沢山物が出して貰える」というのが大変な贅沢だ、と考えるという大きな違いがあるのです。

 ですから、私の夫も、本当は自分で全部決めてしまう方が楽だけれども,あえて色々な下準備や調査などに手間のかかる「選択肢を与える」という方法を取ることで、私に「優しく」しているつもりだった訳ですし、私の方はというと、全部お膳立てしてくれる「優しさ」を求めていたのですから、気持ちのすれ違いが生じるのは当然のことだったのです。

 この一件で、私たちは自分たちの間に「優しさ」に対する意識の違いがあることには気付かされましたが、その後も何度となく、同じ原因で口げんかをすることになりました。 

 結局、数年かかってようやくお互いが納得できるやり方に行き着き、折り合いを付けられるようにはなりましたが、文化の違いが原因で衝突し、そのまま別れてしまう人たちがいるというのは、こういう小さな気持ちのはき違いのせいなのかもしれません。 この経験からも、国際結婚には、二人が忍耐強く話し合い、お互いを理解しようとする姿勢が普通の結婚以上に大切だということを学ぶことになりました。

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