イギリス流・嫁のあり方

結婚をしたら、やはり相手方の家族や友人には、『よいお嫁さん』として受け入れられたいものです。 では、その「よい嫁」の形はどんなものなのでしょう。 日本でいう「よい嫁としての振るまいやあり方」が、そのまま海外でも受け入れられるものなのでしょうか?

 結婚当初、皆さんに祝福されて結婚したからには、実生活ではどうであれ、私も人前では一応「いいお嫁さん」として、旦那さまを立てて、自分のことは卑下するようにしなければ、と心がけていました。 そんな或る日、とあるパーティーに招待されることになりました。 

 まだ英語も思ったようには使いこなせず、しかも、面識もないイギリス人に囲まれて会話をすることが大の苦手だった私に、夫が事前に幾つかの「嫁としての振るまいについて」のアドバイスをくれました。 しかし、最初の一つを聞いて、私はびっくりしてしまいました。 夫は私に、「謙遜はしちゃダメ!」と言ったのです。    

 例えば、仮に誰かに「奥さんが日本に帰っている間、旦那さんの食事はどうしてる?」と訊かれても、日本的に、「チンすればすぐ食べられるものをできるだけ冷凍しておくんですけど、やっぱり申し訳ないですねぇ。 本当に、悪い嫁をもらったって、今ごろ後悔していると思いますよ」なんてことは言ってはダメだと言うのです。 

 そんなことは私にはにわかには信じがたく、グズグズと抵抗していると、彼は続けて、「自分の好きなものを好きに作って食べられるのが結構楽しいみたいだし、それに、いざとなったらTesco(=全国チェーンのスーパー)さんがいますからね。

  ま、彼もあれで立派な大人ですから。ハハハ」くらいのことを言え、と吹き込んできたのです。 私は、そんなことを言って、「まぁ、日本人のクセに、ずいぶんキツイ嫁ね」なんて思われたくない!と言い張ったのですが、「とにかく試しにやってみろ」ということだったので、納得いかぬまま、その日のパーティーに参加することになりました。 

 そして案の定、ある人から、私の留守中の夫の食事について質問があり、私は半分やけっぱちな気持ちで、彼に吹き込まれた通りのことを冗談めかして言ってみました。

 すると、相手の女性は、「そうよ、貴女偉いわ。最初が肝心よ。男なんて、甘やかしたら、後が大変なんだから!」と、笑って賛同してくれたのです。 私には、その人が嘘を言っているようには思えず、信じられない気持ちで、夫の方をチラリと見ると、彼は満足そうに (ほら、言った通りでしょう?) と、目で合図をしてきました。

 その後も、色々な人が結婚生活の話をするのを聞いていたら、やはり皆、「嫁さんが家の中では一番偉い」という形で話しを進めていくことが多く、またそうすることで自然と笑いが起こり、場が和やかになることに気付きました。 

 時々、お土産物屋さんなどで売っている飾り物にも、「この船の船長は俺だ。そう言ってもいいって、ちゃんと妻から許可も取っている」などいった冗談が書かれていることがあるほど、イギリスでは 「女性が強いこと」が微笑ましいこととして、人々の生活に浸透しているのです。

 これは、男性が「一家の主」「大黒柱」だと教え込まれて育った日本人の私たちには、受け入れるまでに少々時間がかかることかもしれません。

 他にも、「結婚した後も何か仕事をしている方がいい」と言われたときにも随分驚きました。 日本では、妻が専業主婦でいられるということは、それだけ旦那さんの甲斐性があるということなのだから幸せだ、と取られることの方が多いと思うのですが、イギリスでは、お金云々よりも、まずその奥さんが一人の人間として、何か生きがいを持っているかどうか、という方に焦点が当てられるようです。 

 小さいお子さんがいるとか、熱中している趣味があるとかいう訳でもなく、ただ「主婦です、毎日家におります」というと、 つまらない人、魅力のない人、と思われて、結果として人から興味を持ってもらえない、ということになってしまうようです。 確かに、夫婦同伴でパーティーに出席し、色々な人とお話をする機会が多いイギリス生活では、会話のタネになる題材を幾つか持っているのは大変な強みとなります。 

 イギリスで仕事を持つ、収入を得ることは難しいとしても、少なくとも大抵のイギリス人が興味を持つ天気、旅行、ガーデニングやペットの話などはできるよう、情報収集をしておくのも、「嫁の務め」ということになるかもしれません。

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